『判断力批判』の基本情報

書籍名:判断力批判 上・下
著者名:イマヌエル=カント
翻訳者名:篠田英雄
発行:岩波書店
発行年:1964年

『判断力批判』のキーワード

カテゴリ:哲学
キーワード:西洋思想、美学、合理論

『判断力批判』のレビュー

イマヌエル=カント。おそらくこの名前は1000年後の哲学史上にも燦然と輝いているだろう。どれだけ低く見たとしても、彼は西洋思想2000年以上の歴史の中で五指には入る思想家である。読者のみなさんも、名前くらいは聞いたことがあるのではなかろうか。

そのカントが遺した作品の中で最も有名なのがいわゆる「三大批判書」―『純粋理性批判』・『実践理性批判』・『判断力批判』である。本書『判断力批判』では、『純粋理性批判』と『実践理性批判』の議論を受け継いで、カントの壮大な「批判哲学」の体系が完成させられることになる。

読者のみなさんは、あえてこの『判断力批判』から「三大批判書」を読み始めてほしい。というのも、「三大批判書」はあまりにも長大なので、最初の『純粋理性批判』から読み始めると途中で挫折する可能性が高いからである(経験談)。

カントが構想した「批判哲学」の概要が掴めれば、残り2冊も頭に入りやすい。本書のテーマの美と芸術について、みなさんが何かしら理解できる部分があれば幸いである。

『判断力批判』の要旨・要約

純粋理性=悟性と実践理性の中間にある判断力は、その機能において、美学的判断力と目的論的判断力に分けられる。

美学的判断において私たちは、モノの表象から主観的な構想力(対象が現前していなくても、その対象の表象を構想する力)によってその美、あるいは崇高(という主観的な合目的性)を反省的に認識する。また、目的論的判断においては、自然の客観的な合目的性を反省的に認識する。

「およそ意図の実現には、必ず快の感情が結び付けられている」(上巻、p51)。自然が合目的的である以上、人間を含むあらゆる自然の所作は全てなんらかの意図の実現である。したがってそこには、普遍的に快の感情がある。

自然は自然界(現象界)に属し、意図は自由界(叡智界)に属する。そして、合目的的な自然は、その意図の実現において普遍的に快をもたらす。こうして、現象界と叡智界の統合が、快の感情を導く判断力によって果たされる。

『判断力批判』への感想

要旨・要約だけでは「快」についてよくわからないと思うので、少し補足しておく。

快の感情は、自然的=客観的な対象の形式と主観の認識能力(悟性と構想力=想像力)との調和の際に生じる、概念に先立って把捉される感情である。

このとき、私たちの主観的な認識能力が持つ「意図」は、対象の形式と私たちの認識能力との一致を「目的」として働いている。したがって、その対象となる自然は「目的に合う=合目的的な」ものである。

つまり、意図の実現に快の感情が伴うのは、そもそもその「意図」が目的とするものに快が随伴するからなのである。

より具体的な例を挙げて考えてみよう。私たちが「生理的に無理」という表現を使うときの「生理的」は「なんとなく」と言い換えられる。そしてなぜ「無理」なのかと言えば、その対象の本質(ものの構造とか、形式とか、雰囲気とか)が、当人の認識能力にとって受け入れ難いからである。

逆に言えば、私たちが「なんかイイ」と思うときは、その対象の本質的な形式と私たちの認識能力がうまくマッチングしているのである。私たちの感性の背後には、カントが指摘した「快」の感情がこのようにして働いているのである。

『判断力批判』と関連の深い書籍

『判断力批判』と関連の深い「西洋思想」の書籍

  • アリストテレス著・三浦洋訳『詩学』、光文社、2019年
  • カント著・宇都宮芳明訳『永遠平和のために』、岩波書店、1985年

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  • カント著・篠田英雄訳『道徳形而上学原論』、岩波書店、1976年
  • カント著・波多野精一;宮本和吉;篠田英雄訳『実践理性批判』、岩波書店、1979年

『判断力批判』と関連の深い「美学」の書籍

  • グリーンバーグ著・瀬木慎一訳『近代芸術と文化』、紀伊国屋書店、1965年
  • グリーンバーグ著・藤枝晃雄訳『グリーンバーグ批評選集』、勁草書房、2005年
  • ヘーゲル著・長谷川宏訳『美学講義 上・下』、作品社、1995年
  • 八幡桜著『シェリング芸術哲学における構想力』、晃洋書房、2017年

『判断力批判』と関連の深い「合理論」の書籍

  • カント著, 中山元訳『純粋理性批判 1〜7』、光文社、2010-2012年
  • ヘーゲル著・熊野純彦訳『精神現象学 上・下』、筑摩書房、2017年

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7件のコメント

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