『ニコマコス倫理学』の基本情報

書籍名:ニコマコス倫理学(上)・(下)
著者名:アリストテレス
翻訳者名:高田三郎
発行:岩波書店
発行年:1973年初版発行

『ニコマコス倫理学』のキーワード

カテゴリ:哲学
キーワード:西洋思想、倫理学

『ニコマコス倫理学』のレビュー

幸福。それは人類にとって永遠のテーマでありながら、思想にとって永遠の難問でもある。幸福をどのように捉えるかによって、様々な議論が可能であるため、中々思想として発展(蓄積)しにくいのである。

だからこそ、幸福論に関しては古典を熟読する必要がある。そして、読むべき幸福論の古典として最たる書籍こそ、本書『ニコマコス倫理学』である。

『ニコマコス倫理学』の著者であるアリストテレスは、言わずと知れた古代ギリシアの天才哲学者である。彼の幸福論は、幸福という言葉から連想される主観的なイメージとは対照的に、緻密な議論の蓄積の上に成り立っている。

彼の議論が万人に受け入れられるかどうかは別にしても、本書を読めば幸福についての論じ方を理解できるはずである。ぜひ、本書を側において大切な人と自らの幸福について議論を深めてもらいたい。

『ニコマコス倫理学』の要旨・要約

人間にとっての最高善、究極目的は「幸福」である。その幸福とは、倫理的な卓越性に基づく活動である。字義的な意味での「幸福」は観照的な活動に存するが、そのような生活は超人間的(神的)であって、人間的ではない。

人間的な幸福とは、倫理的な実践を含めた合成的な「よき活動」に存する。そして、そのような「よき活動」ができるためには、魂の本来的性質である倫理的卓越性に基づく「よき習慣」を身につける必要がある。

よき習慣づけのためには、法律による知慮的にして権力ある国家社会的な指導が必要であるが、立法の問題、国家の問題については場を改めて論じなければならない。

『ニコマコス倫理学』への感想

“Intelligence is not an ability but it’s a habit.”

私が海外のニュースサイトを見ているときに、とある経営者の女性が口にしていた言葉である。「知性とは能力ではなく習慣である」。彼女が本書を読んでいたのかどうかはわからないが、彼女の考えは幸福を導く「よい活動」を行うためには「よき習慣」が必要であるとするアリストテレスの主張に類比的である。

習慣化された行動は意識的には行われず、自然に生じる。私たちが歩くとき、左足を出せば自ずとその後に右足が出てくるように。そして、その人のあり方―知性や幸福など―は、意識的でない行動、つまり習慣から見出される。意識的な行動はごまかせても習慣は嘘をつかないからである。

このような理由で、幸福は習慣から生じる。にもかかわらず、世の中には「簡単に幸福になるための〇〇」といったメソッドを謳う書籍が溢れかえっている。そんなメソッドにできるのは、幸福に見せる行動を示すことだけである。幸福を志す人は、そんなメソッドに手を出す前に、今一度自らの習慣を見直す必要があると私は思う。

『ニコマコス倫理学』と関連の深い書籍

『ニコマコス倫理学』と関連の深い「西洋思想」の書籍

  • アウグスティヌス著・服部英次郎訳『神の国 1〜5』、岩波書店、1982-1991年
  • アクィナス著・稲垣良典訳『在るものと本質について』、知泉書館、2012年
  • アリストテレス著・出隆訳『形而上学 上・下』、岩波書店、1959年
  • プロティノス著・田中美知太郎;水地宗明;田之頭安彦訳『エネアデス<抄>1・2』、中央公論新社、2007年

『ニコマコス倫理学』と関連の深い「倫理学」の書籍

  • アラン著・神谷幹夫訳『アラン 幸福論』、岩波書店、1998年
  • スピノザ著・畠中尚志訳『エチカ−倫理学 上・下』、岩波書店、1951年
  • ヒルティ著・草間平作訳『幸福論 第1部〜第3部』、岩波書店、1961-1965年
  • プラトン著・藤沢令夫訳『国家<上>・<下>』、岩波書店、1979年
  • ラッセル著・安藤貞雄訳『ラッセル 幸福論』、岩波書店、1991年

『ラッセル 幸福論』の要旨・要約、感想とレビュー

  • レヴィナス著・熊野純彦訳『全体性と無限 上・下』、岩波書店、2005-2006年

9件のコメント

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