『ラッセル 幸福論(ラッセル)』の要旨・要約、感想とレビュー

『ラッセル 幸福論(ラッセル)』の要旨・要約、感想とレビュー

『ラッセル 幸福論』の基本情報

書籍名:ラッセル 幸福論
原題:The Conquest of Happiness
著者名:バートランド=ラッセル
翻訳者名:安藤貞雄
発行:岩波書店
発行年:1991年初版発行

『ラッセル 幸福論』のキーワード

カテゴリ:哲学
キーワード:西洋思想

『ラッセル 幸福論』のレビュー

日本は幸せを感じている人の割合が小さい国であると言われているが、本書はそんな不幸せな日本人に読んでもらいたい本である。

本書の原典が執筆されたのは1930年であるが、著者であるラッセルが指摘した不幸の原因は、おそらく現代の日本人の胸に刺さるものばかりであろう。

また、本書に関心がある人はぜひ「20世紀三大幸福論」の残り二つであるアランとヒルティの『幸福論』も読んでみてほしい。時代が変わろうと、人間の幸福の本質は普遍であることが感じられるはずである。

『ラッセル 幸福論』の要旨・要約

不幸の原因は、自己への過度な傾倒にある。「自分が、自分が…」と思い過ぎることによって、過度な競争や精神疲労、他者への嫉妬などの負の感情に支配されてしまう。

したがって幸福となるためには、視点を自己の外へ向けて自分を宇宙の一部だと認識することが必要である。そうすることで、自己の統一的安定が維持され、宇宙が与える生命の本源的な喜びを感受できて、自己個人の死を無駄に恐れることもなくなるだろう。

『ラッセル 幸福論』への感想

幸福の源泉を自己の超出、宇宙の働きとの一致に求める思想は、ヘレニズム時代のストア派からの伝統的な考え方である。

その中でラッセルに固有な点は、哲学的な問題を哲学の用語ではなく日常的な言葉で、そして自身の具体的な経験に基づいて明快に論述している点であろう。本書を読んで、哲学書を読んだ気になる人は少ないと思う。それほどに読みやすい快著である。

とは言え、個人主義に基づく資本主義が加速度的に肥大している現代で、個人を超克して自分を宇宙全体の一部とみなすことは一段と難しくなってきているはずである。ラッセルの議論を現代の時勢に合わせてアップデートすることが喫緊の課題であると言えよう。

『ラッセル 幸福論』と関連の深い書籍

『ラッセル 幸福論』と関連の深い「西洋思想」の書籍

  • アリストテレス著・高田三郎訳『ニコマコス倫理学 上・下』、岩波書店、1971年

『ニコマコス倫理学(アリストテレス)』要旨・要約、感想とレビュー

  • アラン著・神谷幹夫訳『アラン 幸福論』、岩波書店、1998年
  • エピクテトス著・鹿野治助訳『語録 要録』、中央公論社、2017年
  • カント著・波多野精一;宮本和吉;篠田英雄訳『実践理性批判』、岩波書店、1979年
  • ショーペンハウアー著・鈴木芳子訳『幸福について』、光文社、2018年
  • スピノザ著・畠中尚志訳『エチカ−倫理学 上・下』、岩波書店、1951年

『エチカ 倫理学(スピノザ)』要旨・要約、感想とレビュー

  • パスカル著・前田陽一;由木康訳『パンセ』、中央公論社、1973年
  • ヒルティ著・草間平作訳『幸福論 第1部〜第3部』、岩波書店、1961-1965年

5件のコメント

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