『ツァラトゥストラはこう言った(ニーチェ)』要旨・要約、感想とレビュー

『ツァラトゥストラはこう言った(ニーチェ)』要旨・要約、感想とレビュー

『ツァラトゥストラはこう言った』の基本情報

書籍名:ツァラトゥストラはこう言った 上・下
著者名:フリードリヒ=ニーチェ
翻訳者名:氷上英廣
発行:岩波書店
発行年:1976年

『ツァラトゥストラはこう言った』のキーワード

カテゴリ:哲学
キーワード:西洋思想、近代

『ツァラトゥストラはこう言った』のレビュー

ニーチェほど、日本人によく知られた哲学者はいないかもしれない。ニーチェの痛烈な皮肉は師匠であるショーペンハウエル譲りだが、哲学で有名なのがニーチェというのはなんとも皮肉な話である。哲学史上、ニーチェほど異端な存在もそうそうない。にもかかわらずニーチェが哲学の代表のように知られているのは奇妙と言う他ない。

本書『ツァラトゥストラはこう言った』は、そのニーチェの思想のエッセンスを濃縮した大作である。そしておそらく、哲学史上類を見ないほど難解である。本書はある意味で哲学書を超えている。

哲学書で使われる厳かな言葉を脱ぎ捨て、ツァラトゥストラは軽やかに踊る。彼は狂気の中で箴言を叫び、人類を超人へと誘っていく。本書を読めば、あなたもきっと彼の狂気に巻き込まれる。

『ツァラトゥストラはこう言った』の要旨・要約

人間は、克服されなければならない存在である。人間の生は苦悩に満ち、空虚で無意味である。だが人間は、動物と超人との間に横たわる細い綱を渡ることができる。自己を克服し、人間を破滅させることによって、人間は自らの無意味さ・空虚さ・苦悩を乗り越えて「超人」となることができる!

「超人」になるということは、この世のあらゆるものは時間という円環の中で永遠に回帰し続けるという恐ろしい事実(それはつまり、何をしても無意味だということだ)から目を背けず、それを肯定的に受け止めるということである。

永遠回帰の渦の中にあえて沈んでいき、人間としての自己を解体させることで、超人は重力の重みから解放されて高みへと飛翔することができる。

『ツァラトゥストラはこう言った』への感想

本書のタイトルをあえて言い換えるなら、『ツァラトゥストラはこう踊った』と言えるだろう。

民衆の前で踊るツァラトゥストラは、死にゆく身体を重視した。身体が、人間を超人へと導く鍵になるからである。人間としての自我が破壊へと沈んでいくことで、人は超人となって高みへと昇るのだ、とツァラトゥストラは言った。

『この人を見よ』においてニーチェは、真の創造は破壊から生じると主張したが、『ツァラトゥストラはこう言った』においてもその思想は変わらない。内容においてはもちろん、本書の文体すら、旧来の哲学を破壊している。伝統にがんじがらめになった哲学の言語が、ツァラトゥストラの独特なリズムとステップによって鮮やかに再構成されている。

スピノザから受け継がれ、後のドュルーズを生み出したニーチェの思想を体現したツァラトゥストラは、今も変わらず踊り続けている。

『ツァラトゥストラはこう言った』と関連の深い書籍

『ツァラトゥストラはこう言った』と関連の深い「西洋思想」の書籍

  • ドュンス=スコトゥス著・八木雄二訳『存在の一義性 ヨーロッパ中世の形而上学』、知泉書館、2019年

『ツァラトゥストラはこう言った』と関連の深い「近代」の書籍

  • ショーペンハウアー著・金森 誠也訳『存在と苦悩』、白水社、1995年
  • ショーペンハウアー著・西尾幹二訳『意志と表象としての世界 1〜3』、中央公論新社、2004年
  • スピノザ 著 ・畠中尚志訳『エチカ:倫理学 上・下』、岩波書店、2011年

『エチカ 倫理学』要旨・要約、感想とレビュー

  • ドュルーズ著・財津理訳『差異と反復』、河出書房新社、1992年
  • ドュルーズ著・湯浅博雄訳『ニーチェ』、筑摩書房、1998年
  • ハイデガー著・川原 栄峰訳『形而上学入門』、平凡社、1994年
  • ハイデガー著・細谷 貞雄, 輪田 稔, 杉田 泰一訳『ニーチェ1・2』、平凡社、1997年
  • パスカル著・塩川徹也訳『パンセ 上・下』、岩波書店、2015年
  • ニーチェ著・手塚富雄訳『この人を見よ』、岩波書店、1996年

『この人を見よ』の要旨・要約、感想とレビュー

2件のコメント

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