『論理哲学論考(ウィトゲンシュタイン)』要旨・要約、感想とレビュー

『論理哲学論考(ウィトゲンシュタイン)』要旨・要約、感想とレビュー

『論理哲学論考』の基本情報

書籍名:論理哲学論考
著者名:ルートヴィッヒ=ヴィトゲンシュタイン
翻訳者名:丘沢静也
発行:光文社
発行年:2014年

『論理哲学論考』のキーワード

カテゴリ:哲学
キーワード:西洋思想、言語哲学、分析哲学

『論理哲学論考』のレビュー

哲学にあまり関心がない人から、よく「答えのない問題を考え続けるなんてナンセンスじゃない?」という意見をいただくが、この意見に対して「じゃあ、何が答えのない問題なのかを考えることを哲学の意義としよう」と考え、その哲学を実践したのがルートヴィッヒ=ヴィトゲンシュタインである。

彼は本書『論理哲学論考』の中で、「語りうる=真偽を確定しうる=答えの出る」命題とは何かを論じ、答えの出る命題と答えのない命題とを厳格に区別した。そして、私たちが思考の対象にできるのは「語りうる」命題だけであると結論づけた。

本書を読めば、日々考えることが多い私たちも、論理的な思考の整理術を身に付けることができるだろう。忙しい時期に、あえてぜひ読んでほしい一冊である。

『論理哲学論考』の要旨・要約

世界は、「事実」の総体であって、「事物」の総体ではない。事実とは、現実化した「事態」のことを指す。事物は事態の構成要素であり、事態の中で初めて固有の意味を持つ。

事態に論理的に対応している(数学用語で「写像」)のが「命題」である。事態と命題は論理形式を共有しており、命題が真であれば事態は現実に成り立つ事実となり、偽であれば事態は現実に成り立たない。

真であれ偽であれ、成り立つ命題の総体を「論理空間」と呼ぶ。この論理空間は、成り立つ事態の総体である可能性としての世界に対応している。この論理空間/可能性としての世界が「語りうる=命題として表現できる」世界の全体であり、その外側は「語り得ず」、語りうる世界の限界によって「示される」のみである。

「語りうる」命題は自然科学的な(真偽を明確にできる)命題であり、「語りえず、示される」命題は倫理や論理など形而上学的な命題である。「語りうる」命題とそうでない命題とを区別するのが、哲学の役割である。

『論理哲学論考』への感想

論理学の大著である本書は、同時に倫理学や形而上学の大著でもある。一見すると、ヴィトゲンシュタインは「語り得ない」形而上学的な命題を世界の外に放逐したように見えるだろう。しかし彼は、論理的な世界の限界を明確にしたことによって、その外側に位置している問題をも明確にしたのである。

実際彼は、「世界の意味は世界の外側にあるに違いない」(本書、p140)と言い、「口に出せないものが存在している。それは自分をしめす。それは、神秘である」(本書、p145)と断言している。倫理や神、万物の価値は、語りえず示されるものとして存在しているのだという結論が、論理的な世界の記述から帰結するのである。

本書を理解して、思考すべき問題の全てが明確になったとしても、例えば自分の人生の意味は未だに「語り得ない」まま目の前に残り続ける。私たちは終生意味・価値を求め、意味・価値と対峙し続けなければならない。そのために、まず本書を読んで、自分たちが向き合うべき意味や価値が厳然と存在していることを再認識しておきたいところである。

『論理哲学論考』と関連の深い書籍

『論理哲学論考』と関連の深い「西洋思想」の書籍

  • ラッセル著・高村夏輝訳『哲学入門』、筑摩書房、2005年

『論理哲学論考』と関連の深い「言語哲学」の書籍

  • ヴィトゲンシュタイン著・大森荘蔵;野谷茂樹訳『青色本』、筑摩書房、2010年
  • ヴィトゲンシュタイン著・丘沢静也訳『哲学探究』、岩波書店、2013年

『論理哲学論考』と関連の深い「分析哲学」の書籍

  • フレーゲ著・野本和幸訳『フレーゲ著作集<3>算術の基本法則』、勁草書房、2000年
  • フレーゲ著・野本和幸;黒田亘訳『フレーゲ著作集<4>哲学論集』、勁草書房、1999年
  • フレーゲ著・野本和幸;土屋俊訳『フレーゲ著作集<2>算術の基礎』、勁草書房、2001年
  • フレーゲ著・藤村竜雄訳『フレーゲ著作集<1>概念記法』、勁草書房、1999年
  • ラッセル著・平野智治訳『数理哲学序説』、岩波書店、1954年
  • Russell; Whitehead: Principia Mathematica Volume One ~ Three, Merchant books, 2009

4件のコメント

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