哲学は文系のもの……じゃない⁉︎

こんにちは、ライターのらりるれろです。この記事では、理系の方々におすすめしたい哲学書を紹介していきます!

文系の方々はいざ知らず、理系の方々は論文を書く際に哲学書を参照することはほとんどないでしょう。

理系の方々の多くは、哲学書を読む必要がないと感じているではないでしょうか。

しかし私は、理系の方々にも哲学書を読む理由はあると考えています。なぜなら、理系的な哲学というものが存在するからです。

有名なところですと、以下の3つが挙げられます。

  • 科学哲学
  • 分析哲学
  • 形而上学

科学哲学とは、科学的な知識の正当性や、科学的な真理の導出のプロセスについて哲学的に思索する学問分野です。

分析哲学では、数学・科学的な手法(数式など)を用いて哲学的な命題を解いていく学問になります。

そして形而上学は、この世界の成り立ち・構造について論理的な思弁だけで語ろうとする学問です!

いずれも、論理的思考を極限まで切り詰めたゴリゴリの理系的哲学なので、理系のみなさんが読んでも楽しめる内容になっているはずです。

そこでこの記事では、理系のみなさんにおすすめしたい哲学書を、「科学哲学」から3冊、「分析哲学」から2冊、「形而上学」から2冊選んで紹介します!

理系のみなさんが哲学的な思考に触れるきっかけになれば幸いです。

理系におすすめの哲学書7選

理系におすすめの哲学書・科学哲学

理系におすすめの哲学書①:『科学的発見の論理』

1冊目に紹介するのは、ウィーンの哲学者カール・ポパーが1959年に発表した『科学的発見の論理』です。

本書においてポパーは、「反証」の可能性を指摘しました。「反証」とは、以下のような推論のことを指します。

  1. 仮説Hが真であるならば、テスト命題T(=検証の対象になる命題)は真である
  2. テスト命題Tが偽である
  3. 仮説Hは偽である

テスト命題Tが偽であることを証明するのは比較的簡単です。何か一つ反例を用意すれば良いのです。

そしてテスト命題Tが偽であることが証明されれば、必然的に仮説Hも偽になります。推論の最初のステップで、TがHよりも真になりやすいことが示されていたからです。

ポパーは、科学の本質は仮説とその仮説に対する反駁にあると主張しました。

科学とは、推測によって大胆な仮説を提示し、その仮説をあらゆる科学的手段で反駁することの繰り返しであるとポパーは考えていたのです。

ポパーにとって「反証」は、反駁の最も基礎的な手段として重要な推論だったわけです。

命題が偽であることはネガティブな意味を持っているように考えられがちですが、従来の仮説が偽であると示されない限り、新たな仮説は提唱できません。

科学の発展はどのようなプロセスをたどっているのか。ポパーの著作を読んで、もう一度考えてみませんか?

理系におすすめの哲学書②:『科学革命の構造』

二つ目に紹介したいのが、科学史家のトマス・クーンが1962年に発表した『科学革命の構造』です。

ある時代・分野で当然とされていた事柄が劇的に変化することを「パラダイムシフト」と呼びますが、この言葉を最初に使ったのが、本書の著者であるクーンなのです。

ただし、現在使われている意味とは違って、クーンが唱えた「パラダイムシフト」はあくまでも科学においてのみ使われる単語でした。

本書発表後、クーンの議論は様々な分野に影響を与え、自然と「パラダイムシフト」という言葉が拡大解釈されるようになっていったのです。

では、クーン自身はどのように「パラダイムシフト」という事態を捉えていたのでしょうか。

クーンは、科学の発展は以下の3つのステップの繰り返しであると考えていました。

  1. 通常科学
  2. 危機
  3. 科学革命

「通常科学」とは、一定のパラダイム(規範)に従って科学者たちが行う、ルーティンワークとしての研究活動のことです。一般的に想像されるような、研究室で実験したり観察したりする研究ですね。

「危機」とは、通常科学における実験・観察の中で、従来の規範から外れる事象が多数発見される事態のことを指します。

そして「科学革命」とは、「危機」の状態を乗り越えるために新たなパラダイム(規範)が提起されるようになることを指しています。

科学革命の中で、昔のパラダイムを更新する新たなパラダイムが確立されると、その新しいパラダイムの中で研究者たちは再び「通常科学」を行うようになる、というわけです。

クーンの主張で重要なのは、パラダイムシフトが科学の中だけでなく、周辺の社会・文化・歴史をも巻き込んで発生するという点です。

科学の根底を支える価値観は、私たちの生活全体に根ざした思想なのだから、私たちの社会・文化・歴史全体を踏まえて考察される必要がある。考えてみれば、当然の話ですよね。

クーンの主張はその後様々な議論を生みましたが、科学の根底にあるパラダイムは科学の中だけで捉えられるものではないという考え方は、今も再考されるべき価値を持っています。

科学を根底から捉え直したい方は、ぜひ手にとってみてください。

理系におすすめの哲学書③:『科学哲学への招待』

3冊目に紹介したいのは、哲学者・科学史家の野家啓一が2015年に発表した『科学哲学への招待』です。

本書では、古代ギリシアから21世紀にかけて「人類が科学をどのように捉えていたか」ということがわかりやすく整理されています。本書のタイトルを言い換えれば、「科学哲学の歴史」といったところになりますね。

「そんなの学んでどうするの?」と歴史嫌いの理系の皆さんは思われるかもしれませんが、古代ギリシアや中世の科学哲学は学んでおいて損はないと私は思います。

古代から中世のヨーロッパにおいて、科学は宗教と一体になっていました。しかし近世に入ると、「近代科学の父」と称されるガリレオの登場などによって科学は宗教から独立して急速に進展していきました。

合理的な科学の万能性は20世紀初頭まで信じられていましたが、2度の世界大戦、都市部での大気汚染などによって、人類は科学の暴走の危険性に気付くことになります。

そして現在、科学は常に社会・歴史・文化・自然環境と一緒に考えられる学問になりました。

考え方としては、むしろ古代・中世ヨーロッパに近くなったのです。

ですから、これからの科学を考えるにあたって古代・中世の科学観はとても役に立つはずです。

本書は『科学的発見の論理』や『科学革命の構造』のような専門書ではないので、初心者でも読みやすくなっています。

科学哲学の歴史を学んで、未来の科学の可能性をもう一度考えてみてはいかがでしょうか?

理系におすすめの哲学書・分析哲学

理系におすすめの哲学書④:『論理哲学論考』

4冊目に紹介するのは、オーストリア・ウィーンの哲学者、ルートヴィッヒ=ウィトゲンシュタインが1921年に発表した『論理哲学論考』です。

本書については、以下の記事で詳しく解説されていますので、こちらもご参照ください。

本書の中でウィトゲンシュタインが目指したのは、「語りうる」命題と「語り得ない」命題を明確に区別し、「語るべき」命題を見定めるということでした。

理系のみなさんは、哲学者はYESかNOかはっきりしない問題ばかり延々と考えているという印象を持っているかもしれません。

ウィトゲンシュタインも、従来の哲学に対して同じような印象を持ち、本当の意味で「語るべき」問題を見定める必要があると考えました。

そこで彼は、「語りうる」命題と「語り得ない」命題とを区別する基準を作りました。

簡単に言うと、「YESかNOか判断するための検証実験ができるかどうか」というものです。

ある命題が検証可能ならば「語りえる」命題で、検証不可能ならば「語り得ない」命題になるというわけです。

本書では、この基準に基づいて、「語りえる」問題と「語り得ない」問題を区別していきます。

面白いのがその論証の手順で、普通の哲学書とは違って、本書では、最初に主張したいことを「大命題」としておいて、その大命題を補足する「中命題」・「小命題」を順々に連ねていくようになっているのです。

また、ウィトゲンシュタインは論理学や数学基礎論にも通じていたので、頻繁に数式・論理記号を用いながら論証が展開されています。

ですから、理系のみなさんにはむしろ馴染み深い構成になっているはずです。

私たちが「語りうる」問題とは何か。普段使う言語と数式を交差させながら、ウィトゲンシュタインとともに考えてみましょう!

理系におすすめの哲学書⑤:『知の教科書 論理の哲学』

5冊目に紹介するのは、慶應義塾大学教授で哲学者の飯田隆が2005年に編纂した『知の教科書 論理の哲学』です。

本書では、20世紀に急激に発達した数学・論理学についての哲学の最新の研究成果が、編者の飯田先生と8人の専門家によってわかりやすく概説されています。

急に「数学・論理学についての哲学」と言われても「???」と思われるでしょうが、実は数学・論理学・哲学は密接な関係にあります

古代ギリシアで今の哲学の原型が生まれた頃、哲学の中心には「一とは何か」や「一と多はどんな関係なのか」といった数に関連する命題がありました。

有名なピタゴラスも「万物の根源は数である」という言葉を残していますし、古代の哲学者は数学的な命題にも関心を寄せていたのです。

そして、数学的な問題を厳密に解くために、厳格な論理学が発達しました。

このように、古代ギリシアでは、数学と論理学と哲学は一緒になって研究され、発達してきたのです。

物事の根源を探る学問として、現在も数学・論理学・哲学は横断的に研究されています。

数学が好きな方、得意な方は、本書を参考に一度数学と哲学・論理学の関係を見直してもいいかもしれませんよ?

理系におすすめの哲学書・形而上学

理系におすすめの哲学書⑥:『モナドロジー』

6冊目に紹介するのは、17世紀に活躍したドイツの哲学者・ゴットフリート=ライプニッツの遺構をもとに死後編纂された『モナドロジー』です。

本書についての詳細は、以下の記事をご覧ください。


ライプニッツが生きた時代、この世界において本当に存在しているもの(実体)は何かということがしきりに問われていました。

この哲学的な問いに対してライプニッツは、あらゆる複合体を構成する最小単位である「モナド」こそが実体であると応答しました。

モナドとは、他の実体から区別されつつ、「部分を持たない」(=それ以上分けられない)もののことを指します。現代の科学で言うところの「原子」に似ていますね。

ライプニッツのモナドロジーの面白いところは、論証が数学的に進められている点にあります。

現代の微分・積分法の基礎を作った天才数学者でもあったライプニッツは、一切の経験を排除し、論理的に自明である事柄だけに依拠して合理的に推論を重ねていきます。

ですから、数学に慣れている理系の方々は(内容にさえ慣れてしまえば)スラスラと読めるはずです。

高校で習う原子とモナドとの共通点・相違点に注意しながら読むと、普通の物理的な世界観と対をなすライプニッツの世界観がよくわかると思います。

もし時間があれば、数学と哲学の天才が構成した論理の極限を目指した世界を、ちょっと覗いてみてはいかがでしょうか。

理系におすすめの哲学書⑦:『現代形而上学:分析哲学が問う、人・因果・存在の謎』

最後に紹介するのは、日本の若手形而上学者である鈴木生郎・秋葉剛史・谷川卓・倉田剛が執筆した『現代形而上学:分析哲学が問う、人・因果・存在の謎』です。

19世紀末から20世紀にかけて急速に発達した分析哲学のおかげで、言語と論理だけでなく数学を使って形而上学的な問題が解けるようになりました。

一方で、高度な数学に通じていなければ形而上学的な問題を理解できなくなり、現代形而上学は初心者には手の届かない高尚な学問になってしまいました。

でも、人間生きていれば「存在とは何か?」「世界とは何か?」といった形而上学的な問題を考えたくなるときがありますよね。

そんな時に読んでほしいのが本書『現代形而上学:分析哲学が問う、人・因果・存在の謎』です。

本書では、形而上学とは何かという説明から始まり、人の同一性の問題因果の問題存在をめぐる問題が、徐々に論理を発展させながら論じられています。

本書は序章と終章を合わせて10章構成になっていますが、「難しいな」と思ったら序章と第1章だけでも構いません。

人の同一性について知っておけば、「自分って何なんだろう」と悩んだときに役に立つはずです。

もちろん、自分が知りたいテーマがあればそこだけ読んでもOKです。答えのない問いに、哲学と数学と論理の力でチャレンジしてみましょう!!

哲学書を読めば理系の研究を足元から見直せる!

いかがでしたか?

本記事では、科学哲学・分析哲学・形而上学に関する書籍をいろいろ紹介してきました。

言いたいことは山ほどありますが、とりあえず、哲学は理系的な学問と大いに関係しているということを押さえておいてもらえれば大丈夫です。

日本では、学問を文系と理系に分けて考える風習がありますが、どの学問も結局のところ「この世界について知りたい」という欲求から発達している点では同じです。

学問の差異とは、世界についての知への欲求を満たす手段の差異に過ぎないのです。

ですから、理系のみなさんも、「理系だから哲学はいいや」と思うことなく、少しでも興味が湧けば積極的に哲学書に手を伸ばしてみてください。

本記事で紹介した哲学書を読めば、普段当たり前だと思っている価値観を、土台から見直せるようになるはずです。

慣れないうちは大変でしょうが、時間を見つけて少しずつ読んでみてくださいね。

それでは!!



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  1. ピンバック: 人生論・幸福論に飽きている人におすすめの、英語で読める哲学書6選 | 【OLUS】オンライン図書館

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