目次
『モナドロジー』の基本情報
書籍名:モナドロジー 他二篇
著者名:ライプニッツ
翻訳者名:谷川多佳子・岡部英男
発行:岩波書店
発行年:2019年
『モナドロジー』のキーワード
カテゴリ:哲学
キーワード:西洋思想、形而上学
『モナドロジー』のレビュー
日本人は宗教を科学に劣るものとみなす傾向が強い。しかし西洋思想(特に前期近代まで)において、神とは論理の厳密さを追求する際にどうしても想定しなければならない超越的存在だった。
本書『モナドロジー』でもまた、この世界の仕組みを厳密に解くために神が立てられている。論理的必要としての神は、神なき社会に住まう私たちには新鮮に見えるだろう。科学と宗教に対する私たちの思い込みを払拭してくれる一冊である。
『モナドロジー』の要旨・要約
この世のあらゆる複合体は、単純な実体=モナドから構成されている。モナドは部分を持たない。そのため一挙に現れ、一挙に消滅する。
しかしモナドは、それぞれ実体として他から区別されるための性質を持っている。その性質は、モナドの内的原理によって変化する。この変化する諸状態が、モナドの表象であり、変化を駆動させるのが欲求という内的原理である。
ところで、表象の変化の連続にはそれぞれ何らかの理由があるのだが、その理由の究極的なものはモナドの中にはない。仮にモナドの中に究極的な理由があるとすれば、その理由の理由を尋ねなければならなくなり、無限後退に陥るからである。この超越論的な究極原因を、神と呼ぶ。
創造主として完全なる神から、モナドの複合体であるこの世界が創造された。他にも様々な世界が創れたはずなのに、この世界を神が創ったということは、それはこの世界が完全なる神にとって最善であるからに他ならない。したがって最高善とは、その神を模倣し、従うことなのである。
『モナドロジー』への感想
こちらの記事では、デカルト・スピノザ・ライプニッツは、それぞれ異なる立場から形而上学的な存在論を形成していると指摘した。ここでは、3人がいかにして「神」を立てているかを確認しておこう。
デカルトは、不完全なる我の中に「我思う、故に我あり」という完全なる=普遍なる真理があるためには、完全なる神が自我の外側に存在しなければならないと考えた。
またスピノザは、実体は互いに独立した属性を持って自存しなければならないが、その条件を満たす実体は唯一でなければならず、その唯一の実体を神と呼んだ。
そしてライプニッツは、モナドの表象が生じる究極の原因はあらゆるモナドの外側の領域になければならず、その究極原因を神と呼んだ。
三者がそれぞれの議論の中でそれぞれの神を立てているわけだが、神は無限(あるいは超越的)であるというところでは一致している。考えてみれば当然のことである。普遍を目指す上で神が求められたのだから、その神は普遍=無限でなければならない。それだけの話と言えば、それだけの話である。
『モナドロジー』と関連の深い書籍
『モナドロジー』と関連の深い「西洋思想」の書籍
- クザーヌス著・八巻和彦訳『神を観ることについて 他二篇』、岩波書店、2001年
- シモーヌ=ヴェイユ著・冨原眞弓訳『重力と恩寵』、岩波書店、2017年
- スピノザ著・畠中尚志訳『エチカ−倫理学 上・下』、岩波書店、1951年
- プラトン著・納富信留訳『パイドン−魂について』、光文社、2019年
- ブルーノ著・清水純一訳『無限、宇宙及び諸世界について』、岩波書店、1982年
『我と汝』と関連の深い「形而上学」の書籍
- アウグスティヌス著・服部英次郎訳『神の国 1〜5』、岩波書店、1982-1991年
- アクィナス著・稲垣良典訳『在るものと本質について』、知泉書館、2012年
- アリストテレス著・出隆訳『形而上学 上・下』、岩波書店、1959年
- デカルト著・山田弘明;吉田健太郎;久保田進一;岩佐宣明訳『哲学原理』、筑摩書房、2009年
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