経験者が語る飛び級の全て〜飛び級の実態からメリット・デメリットまで〜

経験者が語る飛び級の全て〜飛び級の実態からメリット・デメリットまで〜

はじめに:飛び級って何?

こんにちは。この度、早稲田大学を飛び級で卒業することになりました、ライターのらりるれろです!

海外では飛び級のシステムは浸透していますが、日本だとあまり知られていませんよね。

「飛び級に興味あるんだけどなぁ……」という人も、飛び級の実態については詳しく知らないのではないでしょうか。

そこでこの記事では、実際に飛び級を経験した私が、飛び級の実態について洗いざらい解説していきます!

  1. 飛び級のシステムの概要
  2. 飛び級をめぐる日本と海外の違い
  3. 飛び級のメリットとデメリット

の順番で説明するので、興味関心のあるところから読んでみてくださいね。

日本の飛び級のシステム:早期卒業と飛び入学

日本の飛び級制度は、基本的に大学・大学院のみを対象に設定されています。

海外の飛び級制度については後で解説するとして、ここではまず日本の飛び級のシステムについて解説しますね。

飛び級のシステムは、大きく2つに分かれています。一方が「早期卒業」、もう一方が「飛び入学」です。

どちらもあまり馴染みのない用語だと思うので、1つずつ解説していきます。

日本の飛び級のシステム①:早期卒業

早期卒業の概要

早期卒業とは、文字通り大学・大学院を通常より1年〜半年早く卒業できる特例措置のことです。1999年の法改正で制度化され、2014年時点で大学全体の2割に当たる158校で導入されています(詳しくは こちらから)。

もちろん、早期卒業制度は誰でも使える制度ではありません。文科省は、早期卒業するためには以下の要件を満たさなければならないと公表しています(詳しくはこちらから)。

  • 大学を3年以上在学したこと
  • 卒業要件として大学が定める単位を優秀な成績で修得すること
  • 早期卒業を希望すること

1つ目と3つ目の条件は大学を問わず共通なのですが、2つ目の条件である「優秀な成績」の基準は割と各学部・各研究科によってバラバラです。

そこで以下では、早期卒業できる有名大学を3つ(早稲田大学・東北大学・明治大学)紹介し、それぞれの成績基準について紹介します。参考にしてみてくださいね。

早稲田大学における早期卒業

早稲田大学では、学部によって以下の表のように成績基準が定められていました(ちなみに早稲田の場合、GPAの満点は4.00です)。

詳しい情報を確認したい人は、以下のリンクをクリックしてみてください。

学部 早期卒業に必要な成績
法学部 GPA3.00以上
政治経済学部 GPA3.00以上
国際教養学部 GPA3.50以上
社会科学部 GPA3.20以上
人間科学部 GPA3.70以上

GPAとは大学の成績基準の1つで、履修した科目の得点(GP)の平均値を指します。詳しくは以下の記事をご覧ください)

法学部のようにGPA3.00で成績基準をクリアできる学部もあれば、人間科学部のようにGPA3.70を取らないと3年卒業の要件を満たせない学部もあります。結構バラバラですね。

東北大学における早期卒業

東北大学では、経済学部・法学部・工学部で早期卒業が認められています。

各学部で適用される早期卒業の成績基準は以下の通りです。詳しい情報を知りたい方は以下のリンクをクリックしてみてくださいね。

学部 早期卒業に必要な成績
経済学部 Aまたは80点以上の科目が3/4以上を占める
法学部 なし(ただし法科大学院への進学が条件)
工学部 非公開

法学部は、成績基準が設定されていない代わりに、早期卒業希望者は「学部3年+大学院修士2年」の5年一貫教育を受けることになるそうです。

要するに、東北大学法学部で早期卒業を希望する場合は大学院進学が絶対条件になるわけですね。

工学部の早期卒業制度には成績基準があるのですが、具体的な数値は非公開になっていました。文科省によれば、早期卒業制度を設ける大学はその基準を明確に設定し公表する義務があるらしいのですが、大丈夫なんですかね……?

明治大学における早期卒業

明治大学では、法学部・経営学部・商学部・情報コミュニケーション学部・国際日本学部で早期卒業制度が導入されています。

国際日本学部ではGPA3.20(満点は4.00)が早期卒業の成績基準になっています(詳しくはこちらから)。

残念ながら国際日本学部以外は成績基準が明示されていませんでした。明治大学の早期卒業制度について詳しく知りたい人は、直接大学の教務課に問い合わせてみてくださいね。

早期卒業のための成績基準

どの大学も、大体GPAが3.00~3.70程度あれば早期卒業の成績基準をクリアできます。

別に満点を取らないといけないわけではないので、努力次第で到達できそうな目標ですね。

日本の飛び級のシステム②:飛び入学

飛び入学の概要

続いて飛び入学について説明します。

飛び入学とは、

  1. 高校2年修了直後に、学部1年生として大学に入学すること
  2. 学部3年修了直後に、大学院修士課程1年生として大学院に入学すること

です。

早期卒業制度との最大の違いは、飛び入学する場合に「飛ばした」高校・学部が中退扱いになる場合が多いという点にあります。

例えば高校から大学に飛び入学する場合、高校は中退扱いになることが多くあります。

明治大学法学部のように、大学学部の卒業資格を与えた上で大学院への飛び入学を認める場合もありますが、大抵の大学・大学院では認められないので注意しましょう。

飛び入学できる大学

早期卒業と違って、飛び入学できる大学は非常に限られています。

2021年現在、飛び入学できる大学は以下の8校に限られています(詳しくはこちらから)。

飛び入学できる大学 対象となる学部
千葉大学 文学部・理学部・工学部・園芸学部
名城大学 理工学部
エリザベト音楽大学 音楽学部
会津大学 コンピュータ理工学部
日本体育大学 体育学部
東京藝術大学 音楽学部
京都大学 医学部
桐朋学園大学 音楽学部

数学や芸術系の学部が多いことからわかるように、飛び入学はある特定の専門分野に抜きん出た力がある学生のための制度です。

そのためか、入試では高度な能力を証明するための課題試験・面接試験など一風変わった審査が導入されています。

例えば千葉大学の場合、「方式Ⅰ」と呼ばれる試験形態では、課題論述と書類審査がまず行われ、その結果を踏まえて面接が実施されて合否が決まります(詳しくはこちらから)。

一芸に秀でた学生を入学させるにはもってこいの試験形態ですね。

大学に飛び入学するのは容易ではありませんが、突出した能力がある人は検討してみてもいいですね。

飛び入学できる有名な大学院

高校から大学に飛び入学するのと違って、大学から大学院へ飛び入学するのは比較的一般的になりつつあります。

東大・京大・阪大・早稲田・慶応などの有名大学でも、以下のように飛び入学制度が導入されています。

各大学院の詳細は以下のリンクをご覧ください。

飛び入学できる大学院 対象となる研究科・専攻
東京大学 経済学研究科マネジメント専攻経営コース
京都大学 工学研究科・理学研究科・法学研究科
大阪大学 工学研究科・理学研究科・情報科学研究科
早稲田大学 法務研究科・会計研究科・基幹・創造・先進理工学研究科
慶應義塾大学 商学研究科・法学研究科

基本的にどの大学院も、学部で所定の単位を優秀な成績で修めた場合、学部3年終了後すぐに大学院修士課程1年へ進学することができます

具体的な成績基準は非公開になっていますが、早期入学と同程度以下(GPA3.00〜3.70以下)だと考えられます(それ以上高いと該当者が極端に少なくなるからです)。

また、早稲田大学の会計研究科・慶應義塾大学の法学研究科のように、別の大学から飛び入学できる場合もあるので、詳しく知りたい方は各教務課に連絡してみてくださいね。

飛び級をめぐる日本と海外の違い

ここまでは日本における飛び級制度を紹介してきましたが、海外ではどうなっているのでしょうか。

留年とセットで飛び級制度が運用されている国が多い

政府主催の教育再生会議で使われた資料によると、海外の飛び級制度は留年制度とセットで運用されていることが多いようです(詳しくはこちら)。

典型的なのはフランス・ドイツ・フィンランドですね。

この3国では、大学入学の年齢下限が設定されていない(誰でも受けられる)一方で、留年措置がかなり多く実行されています。

一番留年が多いフランスでは、コレージュ(日本の中学)に在籍する学生の実に23.5%が留年しています。

優秀な学生にはスピーディに高等教育を受けさせる一方で、成績がよくなければ容赦なく留年させられる。ある意味最も公平な教育制度かもしれませんね。

飛び級大国のアメリカでは留年よりも卒業延期措置が取られる

アメリカにおける飛び級は「アクセラレーション」と呼ばれ、小学校から大学院まで幅広い年齢の学生に適応されます。

特定の教科のみの飛び級も可能なので、かなり多くの学生が「アクセラレーション」を利用して教育を受けていると考えられますね。

一方で、フランス・ドイツ・フィンランドと同様に、学業成績の悪い学生には進学差し止め措置が取られています。

といっても留年制度は(現代では)それほど実施されておらず、代わりに「卒業延期措置」というシステムが一般化しているようです。

卒業延期措置とは、卒業試験で一定水準の成績を取れなかった学生の卒業を延期する措置のことです。ちょっと受験したくない試験ですね……。

イギリスでは、それほど飛び級は行われていない

同じ欧米でも、イギリスではそれほど飛び級が実施されていません

大学の面接試験での年齢規定はないので理論上は飛び級可能なのですが、実際にはほとんど実施されていないようです。

一方で留年率も低く(中学での留年は全体の0.8%)、大部分の学生は同じ年齢で進学し、卒業していきます。

欧米諸国の学校制度で、最も日本に近いのはイギリスかもしれませんね。

飛び級のメリットとデメリット

ここまで、日本における飛び級の実態と海外での飛び級事情を解説してきました。

最後に、私が実際に飛び級(大学の早期卒業)を経験した実感した飛び級のメリットとデメリットをみなさんにご紹介します。

「飛び級の資格を持っているけれど、実際に使うのは不安……」という方は、ぜひ最後までみてくださいね。

(飛び級の実体験については以下の記事で詳しく述べているので、興味のある方はこちらもご覧ください)

飛び級のメリット

私の経験からすると、飛び級するメリットとして以下の4点が挙げられます。

  • 学費を節約できる
  • 給付型奨学金がもらえる
  • 教授に目をかけてもらえる
  • メンタルが鋼になる

学費を節約できる

飛び級する最大のメリットは、やはり学費の節約です。

大学って、やっぱりお金がかかりますからね。国立大学ですら授業料だけで年額50万円以上しますし、私立なら年額150万円以上することもザラにあります。

これだけ大きなお金が、飛び級することで1年分ゼロになるわけです。そりゃあもう、飛び級するしかないですよね?

給付型奨学金がもらえる

お金に関連した話で言えば、給付型奨学金も無視できません。

(「給付型奨学金って何?」という方は、以下の記事をご参照ください)

飛び級ができるレベルで良い成績を取ると、多くの大学で成績優秀者用の給付型奨学金を授与できます。

早稲田大学の場合なら、各学部の各学年上位2位に入ると年額40万円の給付型奨学金をゲットできます。

バイトしないで、大学に出ているだけで年額40万円がもらえるわけです。控えめに言って最高ですよね。

先生方に手厚くもてなされる

飛び級すると、学籍番号と学年が対応しなくなります。

早稲田大学人間科学部の場合、学籍番号の上4桁は「1J18…」のように「1J + 入学年度下2桁」の数字が割り当てられるため、通常は現在の年度と入学年度の差分 + 1がその人の学年になります。

ところが飛び級する場合は学年が1つ上がるので、

学年=(現在の年度) ー (入学年度) + 1

の方程式が成り立たなくなるのです。

ですから、講義でコメントシートを書いて提出すると、先生方は学籍番号と学年を見て「あ、この人飛び級だ」って気づけます。

飛び級であることがわかると、

「君飛び級してるんだよね。よかったらこの授業のTA(教務補佐)担当してみない?」

「今度開催する学会に参加してみない?」

などと先生側から学生生活のアシストをしてくれる機会が増えます

実際私も、先生方の援助を受けてTAになったり、学会や研究会に参加したりしました。

先生方の援助があると、大学生活はもっと豊かになります。みなさんもぜひ飛び級して、先生方と仲良くなってくださいね。

メンタルが鋼になる

飛び級は成績のプレッシャーとの戦いです。

普通の大学生と違って、飛び級対象者は大半の科目で最高評価を獲得しなければなりません。

普段の授業に気が抜けないのはもちろん、期末試験の時期になるとメンタルに相当な負荷がかかります。

その重いプレッシャーの中で良い成績をとっていくので、自然とメンタルが強化されます

「あの時あれだけ緊張してもうまくやれたのだから、まあなんとかなるさ」

というように、緊張する状況でも(良い意味で)楽観的になれるわけです。

メンタルの強さは社会人になった後重要になるので、身につけておいて損はありませんよね。

飛び級のデメリット

あらゆる物事と同じように、飛び級にもデメリットはあります。

私が実感してする飛び級のデメリットは以下の2点です。

  • 就職活動が面倒くさい
  • 勉強の絶対量が少なくなる

就職活動が面倒くさい

1点目は、学部を早期卒業して就職する場合のデメリットです。

私は2年生の終わり頃まで大学院進学を考えていたのですが、その後急遽方針を変えて就職することにしました。

普通なら、2年生の終わりというとまだ焦る時期ではないのですが、私の場合大学生活が3年しかないのでかなり焦りました。私にとっての大学2年の終わりとは、普通の大学生の3年終わりに相当するわけですからね。

なんとか希望する企業に内定をもらうことができましたが、飛び級生の就活はなかなかハードモードかもしれません。

勉強量が少なくなる

2点目は、学部を早期卒業して大学院に進学する場合のデメリットです。

普通の大学生ならいざ知らず、有名な大学院に進学を希望する大学生は1年から4年まで真面目に勉強しています。

いくら飛び級生が優秀といえど、この1年の差は無視できません。

学部のレベルなら大丈夫でも、大学進学後に学部1年分の学習差が効いてくる可能性は十分にあります。

飛び級して大学院に進学する人は、他の大学院進学者の4/3倍以上勉強するつもりで頑張ってくださいね。

おわりに:日本でも飛び級はできる!

いかがでしたか?

この記事では、日本における飛び級の実態と海外での飛び級事情、さらに飛び級のメリットやデメリットに至るまで、飛び級に関する網羅的な情報を紹介してきました。

長くなってしまったので、最後にこの記事の内容をまとめておきましょう。

  • 飛び級には「早期卒業」と「飛び入学」がある
    •  早期卒業は半年〜1年早く大学を卒業する制度。
    • 成績基準はバラバラだが、大体GPA3.00〜3.70くらい。
    • 飛び入学は、大学や大学院に1年早く入学する制度。
    • 飛ばした高校・大学は中退扱いになる。
  • 海外では、イギリスを除いて飛び級が一般化している
  • 飛び級にはメリットもデメリットもある

飛び級を全員が目指すべきとは思いませんが、必要な人にとっては非常に有意義な制度です。ぜひ一度じっくりと検討してみてくださいね。

それでは!!

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