はじめに:東浩紀さんの本でおすすめの作品を5冊選びました!

こんにちは、ライターのらりるれろです。

この記事をご覧になっている方の多くは、「東浩紀」という思想家の名前をどこかで聞いたことがある方だと思います。

東浩紀さんは、1999年に『存在論的、郵便的』でデビューして以来、テレビや雑誌、SNSで意欲的に活動を続けている思想家・批評家です。

今回は、その東さんの著作の中でおすすめしたい本を5冊選んで紹介します。気に入ったのがあれば、ぜひ読んでみてくださいね。

東浩紀さんについて

東さんの作品紹介に移る前に、簡単に東さんの来歴と思想の特徴を紹介しておきます。

東浩紀さんの来歴

東浩紀さんは、現代日本の思想界の最前線を走り続けている哲学者・作家・批評家です。

1971年に東京で生まれた東さんは、筑波大学附属駒場高校を卒業後、東京大学文科1類に入学し、同学教養学部に進学します。

その後、東京大学大学院総合文化研究科へ進み、現代思想・表象文化論を専攻して、博士課程修了時に、博士論文である『存在論的、郵便的—ジャック・デリダについて』(1999年)を刊行しました。

東さんは、この『存在論的、郵便的』で第21回サントリー学芸賞(思想・歴史部門)を受賞し、一躍思想界で注目を集めることになります。

その後も、『動物化するポストモダン』(2001年)や『一般意志2.0』(2011年)、『ゲンロン0 観光客の哲学』(2017年)など多数の著作を刊行し続け、多くの支持者を集めています(私もその一人です笑)。

2010年には、学会などのアカデミズムに縛られない超域的な思想を作り出す団体として「株式会社ゲンロン」を立ち上げ、思想系のサロンを開いたり、雑誌「ゲンロン」を刊行したりしています。興味のある方は、こちらのサイトにアクセスしてみてください。

東浩紀さんの思想の特徴

東さんの思想は、「わかりやすいが、わかりやす過ぎない」のが特徴です。

東さんの書く文章は、思想家の文章としては大変珍しく、とても平明な言葉遣いになっています。ですから日本語としては非常に読みやすくなっています。

日本語がわかりやすい一方で、東さんの思想はかなり骨があります。普通、言葉遣いを簡単にすれば、語る内容の中身がなくなってしまいそうなのですが、東さんの場合はそうではありません。

東さんは、わかりやすい言葉で、中身のある議論を展開しています。まさに理想の思想家と言えるでしょう。

東浩紀さんのおすすめ本5選!

以下では、東さんの著作を「哲学」・「社会学」・「文学」に分類し、それぞれの分野のおすすめ本を紹介します。

東浩紀さんのおすすめ本:哲学篇

『存在論的、郵便的—ジャック・デリダについて』

本書は、東さんが東京大学に提出した博士論文を基に刊行された哲学書です。

 

内容は、タイトルの通り、ジャック・デリダというフランスの哲学者の思想を解釈したものになっています。

デリダの思想の中で有名なキーワードとして「脱構築」という表現があります。

「脱構築」とは、旧来の二項対立的な構造を絶えず逸脱し続ける運動のことを指すのですが、東さんはこの「脱構築」を、数学者ゲーデルから影響を受けた「論理的脱構築」・哲学者ハイデガーから影響を受けた「存在論的脱構築」・精神分析学者フロイトから影響を受けた「郵便的脱構築」の3種類に区別しました。

詳しい説明は省きますが、この3種類の脱構築の中で、最も基礎的な「論理的脱構築」を通って、デリダは「郵便的脱構築」へと進み、「存在論的脱構築」を否定した、と東さんは指摘しています。

フランス・ドイツの現代思想全体を包括した視線から分析するデリダの「脱構築」論は、発表から20年以上が経過した今もなお絶大な支持を集めています。

博士論文という体裁の都合上、東さんにしてはかなり読みにくい文章になっていますが、本格的にデリダを研究してみたい人はぜひ読んでみるといいですよ!

『ゲンロン0—観光客の哲学』

本書は、『存在論的、郵便的』以降の東さんの思想をまとめた哲学書です。

同じ哲学書でも、博士論文だった『存在論的、郵便的』とは違って一般向けに書かれた本なので、かなり読みやすい言葉遣い・構成になっています。

『存在論的、郵便的』の最も大きなテーマは「脱構築」でしたが、『観光客の哲学』では「誤配可能性」というデリダ思想の別のキーワードが中心的に扱われいます。

「誤配」というデリダの表現の意味は、簡単に言うと「厳密な意味での偶然の運動」です。

「厳密な意味での」偶然の運動とは、いかなる点においてもその運動の意味を問えず、本当の意味で「無意味」な運動のことを指します。

無意味な運動に何の意味があるんだと思うかもしれませんが、東さんは「有意味性だけに縛られていては、行動の選択肢が必要以上に狭まってしまう」と指摘しています。

斬新な発想、斬新な行動に打って出るには、今の自分には無意味にしか思えないことに挑まねばならない、というわけですね。

『観光客の哲学』は、本当に「哲学書かくあるべし!!」という感じで、わかりやすい表現で骨のある思想を語る哲学書なので、哲学未経験の方にもおすすめしたい一冊になっています。ぜひ、一度手にとってみてくださいね。

東浩紀さんのおすすめ本:社会学篇

『弱いつながり—検索ワードを探す旅』

『観光客の哲学』で示された「偶然性の可能性」を、Googleとの対比からよりわかりやすく指摘したのが、本書『弱いつながり—検索ワードを探す旅』です。

東さんは1年の1回海外旅行に行っているのですが、海外の街を歩いていたときに、漫然とインターネットに触れているだけでは絶対に得られなかったような情報を彼は入手できたそうです。

インターネットの言語空間に触れるだけで満足するのではなく、言語化される以前の「モノ」に直接触れる。その経験によって、検索システムに依存しない新たな思考回路を自分の中に持つことができる——思想家・評論家として数々の国を歩いてきた東さんの言葉には、経験に裏打ちされた重みがあります。

詳しい説明は以下の記事でしていますので、気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。

東浩紀さんのおすすめ本:文学篇

『動物化するポストモダン—オタクから見た現代社会』

20世紀末に思想家・批評家としてデビューした東さんは、ゼロ年代を通して文芸批評の活動に精力的に取り組んでいました。

その文芸批評の活動を社会学的な立場からまとめたのが、本書『動物化するポストモダン—オタクから見た現代社会』です。

フランスの思想家コジェーブは、動物と人間との違いを次のようにまとめました:「動物は欲求し、人間は欲望する。動物の欲求に他者は必要ないが、人間の欲望は必ず他者を必要とする」。

ところが東さんによれば、ポストモダン(近代の後=現代)の私たちは、むしろ「動物的に」欲求する存在になっています。人間の欲望はもはや他人を必要としなくなり、単純に「欠けているモノを満たす」だけの単純な機械になっている——

人間の「動物化」のわかりやすい例が「萌え」です。

「萌えキャラ」は、「萌え」要素を網羅的に有していることで「萌え」の対象になる。「萌え」に飢えている人々は、「萌え」への欲求を満たすために、「萌え」要素をひたすらに消費する。一旦満足した後、また「萌え」に飢えれば同じ行動をとる。

オタク的な行動は、このように「不足—充足」という形に単純化しているのだ、と東さんは指摘しています。

本書が発表されてからすでに20年近くが経過していますが、東さんが指摘した「動物化」は、近年ますます加速しているように感じています(個人的には「鬼滅」ブームの現象が「動物化」の帰結であると考えています)。

オタク文化、そして現代社会の問題に少しでも興味のある方はぜひ一度読んでみてくださいね。

『セカイからもっと近くに—現実から切り離された文学の諸問題』

『動物化するポストモダン』とは違う視点で、現代社会の文学・文芸批評について分析したのが本書『セカイからもっと近くに—現実から切り離された文学の諸問題』です。

かつて文学とは、現実社会を何らかの形で反映した芸術でしたが、現代においては文学の想像力と現実がほぼ完全に乖離してしまっていて、文学は現実社会を忘れるためのエンターテインメントとして機能するようになっています。

このようなエンターテインメント(反芸術)化した文学の典型が「セカイ系」であると東さんは指摘しています。

「セカイ系」とは、主人公たちの内面的な葛藤が、世界全体の命運に直結し、世界と内面とを媒介するはずの社会がほとんど無視されるようなサブカル作品のことを指します。

このような「セカイ系」作品を批評的に分析するのはほぼ不可能です。というのも、文学に対する批評は、文学が現実社会との間に関連があることによって効力を発揮するのであって、文学と社会が無関係になれば、批評は単なる「感想」以上の意味を持たないからです。

しかし、この「セカイ系」的な作品の中にも、社会とのつながりを再び見出そうとしている作品があると東さんは主張しています。

本書では、社会とのつながりを再び見出そうとする「セカイ系」的作品として、新井素子・法月綸太郎・押井守・小松左京の作品を取り上げ、それぞれが残す現実社会の痕跡を辿りながら、新たな文学の可能性を問い直していきます

現代社会において文学を学ぶとき、「セカイ系」のような「文学における現実社会の不在」という問題は避けて通れません。

東さんの文学批評は、この「セカイ系」作品への向き合い方の処方箋を私たちに示してくれています。現代文学・批評に興味がある方は、ぜひ一度読んでみることをおすすめします!

おわりに:もっと読んでみたい人向けの東浩紀さんの本

この記事では、東浩紀さんの著作の中からおすすめの本を5冊選んで紹介しました。

参考までに、この記事で紹介できなかった東さんの著作をリストアップしておきましたので、ぜひこちらも見てみてくださいね。

  • 『ゲーム的リアリズムの誕生—動物化するポストモダン2』、講談社、2007年
  • 『サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+東浩紀アーカイブス2』、河出書房新社、2011年
  • 『郵便的不安たちβ』、河出書房新社、2011年
  • 『一般意志2.0—ルソー・フロイト・グーグル』、講談社、2015年
  • 『テーマパーク化する地球』、ゲンロン、2019年
  • 『ゆるく考える』、河出書房新社、2019年
  • 『哲学の誤配』、ゲンロン、2020年

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。