目次
『構造と力』の基本情報
書籍名:構造と力
著者名:浅田彰
発行:勁草書房
発行年:1983年初版発行
『構造と力』のキーワード
カテゴリ:哲学
キーワード:西洋思想、哲学史
『構造と力』のレビュー
哲学的な思想に馴染みがない人が抱く疑問として最も根本的なものは、「哲学って何?」という疑問だろう。
その疑問に対する答え方の一つが、哲学史を示すということだろう。体系的な哲学史を示すことができれば、その体系の軸となる部分が哲学の本質である、と言えるからである。
とはいえ、哲学史を編むことは非常に難しい。どのような編集をしても、そこから漏れてしまう重要な思想が出てきてしまうのである。
この困難な仕事を、フランスの思想界に対して行ったのが、当時26歳の大学院生だった浅田彰である。浅田がまとめたフランス思想の流れは非常に明快で、誰にでもわかりやすく纏まっている。発行からすでに40年以上経過しているが、浅田の作った流れに従ってフランスの思想を学ぶのも悪くないだろう。
『構造と力』の要旨・要約
前近代の時代において社会はツリー構造だった。つまり、社会には絶対的な上位者がいて、絶対的上位と下位との差が固定的であったのである。
これが近代の時代になると、社会の構造はクラインの壺(壺の内側が外側と連結している壺)のようになる。貨幣の運動に象徴される近代社会は、固定的な階層構造を持たない。あるときに構築された構造は、すぐさま解体され新しい構造を作る。資本主義的近代社会では、この運動が延々と繰り返される。
そして、近代のあとには、近代社会における運動を司っていた力が、構造の構築という役目から解放されて自由になる。それに伴って、あらゆる構造が切断され、社会がリゾーム(植物の根のような構造)化する。
『構造と力』への感想
浅田彰自身、本書を「チャート式参考書のように」(本書p239)することを目指したと述べているように、本書はフランス思想の教科書的な書籍と言っていいだろう。前近代から近代以後に至るまでの流れを非常にシンプルな図式にまとめているので、頭には入りやすい。
しかし本書執筆が1983年である以上、まだ近代以後の社会のイメージが抽象的な次元にとどまっているのも事実である。
この問題を引き継いだのが東浩紀の『存在論的、郵便的―ジャック・デリダについて』であり、千葉雅也の『動きすぎてはいけない:ジル・ドュルーズと生成変化の哲学』であると私は考えている。1998年の『存在論的〜』、2013年の『動きすぎてはいけない〜』と時代が下るにつれて、近代以後の社会像が明確化されてきている印象を受ける。
黙っていても時代は動く。しかし流されないためには時代を絶えず語り続けなければならない。今後、近代以後の時代を語っていくのは、他ならぬ大学生の私たちであることを忘れてはならない。
『構造と力』と関連の深い書籍
『構造と力』と関連の深い「西洋思想」の書籍
- 東浩紀著『存在論的、郵便的―ジャック・デリダについて』、新潮社、1998年
- 柄谷行人著、『探求Ⅰ・Ⅱ』、講談社、1992年
- 千葉雅也著『動きすぎてはいけない:ジル・ドュルーズと生成変化の哲学』、河出書房新社、2013年
- ドュルーズ著・財津理訳『差異と反復』、河出書房新社、1992年
- ニーチェ著・原佑訳『ニーチェ全集<12>・<13> 権力への意志 上・下』、筑摩書房、1993年
- フーコー著・渡辺一民;佐々木明訳『言葉と物―人文科学の考古学』、新潮社、1974年
- ラカン著・宮本忠雄;竹内 迪也;高橋徹;佐々木孝次訳『エクリ1〜3』、弘文堂、1972-1981年
- レヴィナス著・熊野純彦訳『全体性と無限 上・下』、岩波書店、2005-2006年
『構造と力』と関連の深い「哲学史」の書籍
- 神崎繁;熊野純彦;鈴木泉編『西洋哲学史Ⅳ 「哲学の現代」への回り道』、講談社、2012年
- 山内志朗著『「誤読」の哲学 ドュルーズ、フーコーから中世哲学へ』、青土社、2013年
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