『情報社会の<哲学>』の基本情報

書籍名:情報社会の<哲学> グーグル・ビッグデータ・人工知能
著者名:大黒岳彦
発行:勁草書房
発行年:2016年

『情報社会の<哲学>』のキーワード

カテゴリ:哲学、科学哲学、倫理学
キーワード:情報社会、自律=自己組織、「人格」と「孤人」

『情報社会の<哲学>』のレビュー

『情報社会の<哲学>』のテーマ

今やインターネットは全世界を覆い尽くそうとしている。

「情報社会」と呼ばれる時代が到来してから長い時間が経過し、私たちは自分の手足のように情報機器を使うようになった。

しかし、この情報社会はあまりにも大規模に展開されているため、全体像を把握するのは極めて難しい。私たちが生きているこの社会は、一体どんな構造をしているのか?

また、情報社会ではあらゆる価値観が肯定されるため、みんなが共有できる価値観=倫理がなくなるのではないかという危険が指摘されているが、情報社会で倫理は本当に存在できないだろうか?

本書は、これらの問いに哲学を用いて応答する哲学書である。

情報社会の本質は何で、その社会の根底に共有される価値観は存在しうるのか

本書で掲げられるテーマに無関心な人はいても、無関係な人はいないはずである。

この記事はこんな人におすすめ!

  • 哲学に興味がある人
  • 社会学に興味がある人
  • 情報科学に興味がある人
  • 理系で哲学的な問題に関心がある人

『情報社会の<哲学>』の要旨・要約

情報社会の存立構造

情報社会は、以下の3つの要素で成立している自律=自己組織的体系である。

  • 社会構造(コミュニケーションの接続プログラム)
  • 実際のコミュニケーション
  • 社会プロセス(コミュニケーションの接続そのもの)

社会の根底にあるのは、社会の構成員同士のコミュニケーションを可能にするプログラムである。

例えば、インターネット上のコミュニケーションはコンピュータの二値コードによって成立しているし、対面のコミュニケーションは言語体系の論理構造に従っている。

そのプログラムに従って実際にコミュニケーションが行われることによって、コミュニケーションの接続の仕方が顕在化される

コミュニケーションの接続の仕方が顕在化することで、コミュニケーションを可能にするプログラムがより強化される

このようにして、

情報社会は自律=自己組織化している

情報社会における倫理

情報社会の自律=自己組織的な構造の中で、人間はコミュニケーションの素子である「人格」(パーソン)として存在している。

逆に、コミュニケーションの素子となり得ない人間は、「人格」ではない「孤人」(ヒト)として情報社会のシステムから排除される(例:カード破産した人が、経済的だけでなく社会的にも排除されてしまう)。

情報社会のシステムがコミュニケーションを形成するとき、すでに社会は人間を「人格」と「孤人」に分断している。

「人格」と「孤人」の区別なくして情報社会のシステムは駆動しないのだから、情報社会は自らのシステムの外部に位置する「孤人」との関係を保ち続ける必要がある。

「孤人」と情報社会がいかにして向き合うか

この問題が、情報社会を基礎づける倫理となる。

『情報社会の<哲学>』のまとめ

  • 情報社会のシステムは自律=自己組織している。
  • 情報社会は、その存立にあたり排除せざるを得ない「孤人」との関係を持つことを宿命づけられており、この関係が情報社会を基礎づける倫理となる。

『情報社会の<哲学>』への感想

情報社会は、不特定多数とのコミュニケーションによって基礎づけられている。

この不特定多数のコミュニケーションを可能にしているのは、端的に言えば反復可能性である。

反復可能性を持つものとしてわかりやすいのが言語だろう。「私は家にいます。」という言語表現は、どこの誰にでも反復可能できる。

反対に、反復可能性が低いものが芸術である。絵を描くことそのものは誰にでもできるかもしれないが、私が描いた絵は私にしか描けない。

仮に、この世の全てが反復可能になったら、もはや人類は進化できないだろう。全てが反復可能であるとしたら、完全に新しいものはもはや生まれないからである。

SNSなどでのコミュニケーションによって、世界は「反復可能なもの」=誰にでも使えるものに覆われようとしている。

全てが反復可能になる前に、誰にでも使えることが絶対に正しいわけではないということを私たちは思い出さねばならない。

『情報社会の<哲学>』と関連の深い書籍

『情報社会の<哲学>』と関連の深い「科学哲学」の書籍

  • オング著:桜井直文他二人訳『声の文化と文字の文化』、藤原書店、1991年
  • 大黒岳彦著『<メディア>の哲学:ルーマン社会システム論の射程と限界』、NTT出版、2006年
  • フレーゲ著・野本和幸;黒田亘訳『フレーゲ著作集<4>哲学論集』、勁草書房、1999年
  • マクルーハン著:栗原裕;河本仲聖訳『メディア論ー人間の拡張の諸相』、みすず書房、1987年
  • マクルーハン著:森常治訳『グーテンベルクの銀河系』、みすず書房、1986年
  • ルーマン著:馬場靖雄訳『社会システム論 上・下』、勁草書房、2020年
  • ルーマン著:土方透;大澤善信訳『自己言及性について』、筑摩書房、2016年

『情報社会の<哲学>』と関連の深い「倫理学」の書籍

  • ドゥルーズ著:財津理訳『差異と反復 上・下』、河出書房新社、2009年
  • レヴィナス著:熊野純彦訳『全体性と無限 上・下』、岩波書店、2005-2006年

 

 

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