『哲学史序論(ヘーゲル)』要旨・要約、感想とレビュー

『哲学史序論(ヘーゲル)』要旨・要約、感想とレビュー

『哲学史序論』の基本情報

書籍名:哲学史序論ー哲学と哲学史ー
著者名:ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ=ヘーゲル
翻訳者名:武市健人
発行:岩波書店
発行年:1967年

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カテゴリ:哲学
キーワード:西洋思想、哲学史

『哲学史序論』のレビュー

大学生の読者、あるいはかつて大学生だった読者の皆さんは、「一般教養科目」という忌まわしい響きの講義を覚えていることだろう。一年・二年の必須講義として、興味もないのに講義に出席したという人も多いのではないだろうか。

一般教養科目のテッパンとも言える講義に「哲学」や「哲学概論」がある。私は哲学専攻なので当然履修していたわけだが、なるほど確かにつまらない。「哲学とはなんぞや?」という深い問いに迫る刺激的な講義なのかと思いきや、延々と古代から現代までの哲学史を概説するというスタイルで展開されていたからである。

なぜ大学の講義といい入門書といい、哲学をこれから習う人に哲学史の概説を行うかといえば、それはおそらくヘーゲルが本書『哲学史序論』や『歴史哲学講義』の中で「哲学史は単なる歴史ではなく、それ自体が歴史である」という趣旨の発言をしたからである。

ヘーゲルの発言の意図を聞けば、根暗そうな教授から垂れ流される哲学の歴史も少しは楽しくなるかもしれない。これから「パンキョー」の哲学を履修する人ももう履修してしまった人も、ぜひ読んでほしい「哲学史の哲学」がここにある。

『哲学史序論』の要旨・要約

私たちの普遍的理性は、現実的でありながらにして歴史的である。普遍的な真理は、現在の上に成り立っているわけではなく、遥かなる古代の哲人から継承されてきた遺産であり、かつ未来の賢人へと継承されるべき課題である。哲学を行う普遍的思惟は、既存の広大な哲学的精神世界を己の精神のうちに内包した上で、その世界を改めなければならない。したがって哲学の精神は、それ自体が哲学史的なのである。

哲学は普遍的に成り立つ命題を扱う点で他の諸科学とは異なっているし、普遍的な真理を自らの理性によって掌握しようとする点において宗教とも異なっている。哲学の最終的な目的は、この「私」とは何かを明証的に知るということにある。

ところで、精神にとっての「私」は、現実に存在している「私」から切り離されている。そして精神が認識する「私」は、精神が生まれた段階では、現実の「私」とは比べ物にならないほど貧弱な内容しか含んでいない。しかし精神における「私」は現実の「私」を目指して発展していくことで、最終的には現実の「私」と一致するに至る。

この長い長い行程の中が哲学史となるのだが、少なくとも現在(19世紀初頭)における哲学史はギリシア哲学・中世哲学・近世哲学に分けられる。ギリシア哲学は思想を基盤としており、中世哲学は本質と形式を基盤としており、近世哲学は概念を基盤としている。

『哲学史序論』への感想

本書『哲学史序論』の中でヘーゲルは、「変化」と「発展」を明確に区別している。そして哲学は「変化」ではなく「発展」するのだと主張している。

変化と発展の本質的な違いは、終局点の有無である。明確な終局点があればそれは「発展」であり、なければ「変化」である。

ヘーゲルが哲学としての哲学史を「発展」と捉えたのは、その歴史の終局が明確に存在していたからであるーそれは何か。現実に生きている「私」である。哲学史は、精神のもとに生まれ落ちた「私」が現実に生きる「私」と一致するまでの壮大なプロセスなのである。したがって、哲学の発展は円環を描いている。自我から始まって自我に終わる。

この円環は決して無意味な発展ではない。デカルトの「我思う故に我あり」によって近代哲学は「私」の実在を認めなくてはならなくなったが、現実の「私」は認識される「私」にとって遥か遠くにある。哲学が、宗教とは違って真理を自ら掴もうとする学問である以上、目指すべきは厳格に実在するこの「私」をおいて他にはないのである。

『哲学史序論』と関連の深い書籍

『哲学史序論』と関連の深い「西洋思想」の書籍

  • ヘーゲル著・木場深定訳『ヘーゲル全集15〜17 宗教哲学 上・中・下』、岩波書店、1982-1995年
  • ヘーゲル著・熊野純彦訳『精神現象学 上・下』、筑摩書房、2018年

『精神現象学』要旨・要約、感想とレビュー

  • ヘーゲル著・長谷川宏訳『美学講義 上・下』、作品社、1995年
  • ヘーゲル著・藤野渉;赤沢正敏訳『法の哲学 1・2』、中央公論新社、2001年
  • マルクス著・長谷川宏訳『経済学・哲学草稿』、光文社、2010年

『経済学・哲学草稿』要旨・要約、感想とレビュー

  • カント著, 中山元訳『純粋理性批判 1〜7』、光文社、2010-2012年
  • カント著・篠田英雄訳『判断力批判 上・下』、岩波書店、1964年

『判断力批判』要旨・要約、感想とレビュー

  • シェリング著・西谷啓治訳『人間的自由の本質』、岩波書店、1951年
  • フィヒテ著・木村素衛訳『全知識学の基礎』、岩波書店、1949年

『哲学史序論』と関連の深い「哲学史」の書籍

  • ヘーゲル著・長谷川宏訳『哲学史講義Ⅰ〜Ⅳ』、河出書房新社、2016年

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