『社会契約論(ルソー)』要旨・要約、感想とレビュー

『社会契約論(ルソー)』要旨・要約、感想とレビュー

『社会契約論』の基本情報

書籍名:社会契約論
著者名:ジャン・ジャック・ルソー
翻訳者名:桑原武夫・前川貞次郎
発行:岩波書店
発行年:1954年

『社会契約論』のキーワード

カテゴリ:哲学
キーワード:西洋思想、政治哲学

『社会契約論』のレビュー

大学生になれば、アルバイト先で書類にサインする機会はあるだろうし、アルバイトしていない人でも、宅配便の受け取りの際にサインする機会はたくさんある。私たちが何気なく印すサインやハンコは、立派な社会契約の証であるが、社会契約とはそもそも何だろうか?その問いの源泉ともいうべき著作が、本著『社会契約論』である。

ルソーが本著を著した18世紀当時、契約といえば主従関係を締結させる服従契約が当たり前であった。しかしルソーは、個々人の自由と平等という自然権が守られるためには、主権者たる個人間の相互契約である社会契約が必要であると訴えた。

人民による政治を基礎付けた本書は、やがてフランス革命の到来を招くことになる。民主主義のあり方が再び問われている今、改めて読みたい政治思想の傑作である。

『社会契約論』の要旨・要約

私たち人間は生まれながらにして自由かつ平等である。しかし従来の王政ではこの自然権が守られていなかった。自然権が守られるためには、各人の自由と平等を各人が保証しなければならない。

各人が各人の自然権を保証するためには、自由・平等を目指す人間にとって普遍的な意志=一般意志のもとに従うべきである。一般意志のもとで成り立つ社会では、各人の相互利益が保たれる。また、一般意志のもとで社会を形成するために、その構成員たちは、各人相互を結びつける社会契約を結ぶことになる。この契約のもとで、構成員たちは直接民主制に参画し、人民による人民のための政治を行えるようになる。

『社会契約論』への感想

本書のキーワードを2つ挙げるとしたら「一般意志」と「社会契約」だが、ここでは理解しづらい「一般意志」について簡単に紹介しておく。

ルソーは「一般意志」を「特殊意志」と「全体意志」から区別している。特殊意志とは個々人それぞれの意志である。最も基本的な意味である「意志」と言っていいだろう。そして全体意志とは、特殊意志の総和を指す。例えば、「どんな企業に就職したいですか?」という質問を共同体の構成員に与えたとして、その回答の集積が全体意志となる。

これに対して特殊意志とは、全体意志から相殺する過不足を除いた相違の総和とされている。全体意志がスカラー量であるとすれば、一般意志はベクトル量ということになる。

ルソーはこの一般意志が、当の共同体全体に存する「自我」の意志であると考えたが、この抽象性が問題を困難にしてしまった。要するに、一般意志を結局どのようにして把握するのか、という難題を前に人民は悩まなければならなくなったのである。

一般意志に関しては、2011年に批評家の東浩紀氏が『一般意志2.0』という書籍を発表して話題になった。氏は、現代の日本だからこそ成立する新たな民主主義の可能性について、一般意志の概念を使いながら論述している。興味のある方はこちらもぜひ参照して、一般意志とは何かという難題について考えてみてほしい。

『社会契約論』と関連の深い書籍

『社会契約論』と関連の深い「西洋思想」の書籍

  • 東浩紀著『一般意志2.0』、講談社、2011年
  • カント著・宇都宮芳明訳『永遠平和のために』、岩波書店、1985年

『永遠平和のために』要旨・要約、感想とレビュー

  • ミル著・斎藤悦則訳『自由論』、光文社、2012年
  • ルソー著・今野一雄訳『エミール 上・中・下』、岩波書店、1962-1964年
  • ルソー著・中山元訳『人間不平等起源論』、光文社、2008年

『社会契約論』と関連の深い「政治哲学」の書籍

  • スミス著・水田洋;杉山忠平訳『国富論 1〜3』、岩波書店、2000-2001年
  • ペイン著・小松春雄訳『コモン・センス 他三篇』、岩波書店、2005年
  • ホッブズ著・角田安正訳『リヴァイアサン 1・2』、光文社、2014-2018年
  • ルソー著・桑原武夫;前川貞次郎訳『社会契約論』、岩波書店、1954年
  • ロック著・加藤節訳『完訳 統治二論』、岩波書店、2010年

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