目次
『プロテスタンティズムと資本主義の精神』の基本情報
書籍名:プロテスタンティズムと資本主義の精神
著者名:マックス・ヴェーバー
翻訳者名:大塚久雄
発行:岩波書店
発行年:1989年
『プロテスタンティズムと資本主義の精神』のキーワード
カテゴリ:哲学
キーワード:西洋思想
『プロテスタンティズムと資本主義の精神』のレビュー
近代資本主義は、その発生以後、常に批判にさらされてきたが、今なお存続し、肥大し続けている。対抗勢力の規模が20世紀のうちに縮小したこともあって、その肥大は今加速している。この事実を前にすると、一つの疑問を湧いて出る。なぜ資本主義は数百年もの間存続できているのか、と。
この問題に、約100年前(1905年)に比較宗教社会学的な見地から取り組んだのがマックス・ヴェーバーである。彼は、近代資本主義を可能にしたのは貪欲な利益追求を求める精神ではなく、むしろ営利の追求を敵視するピューリタニズム(プロテスタンティズム)であるとする画期的な主張を打ち出した。
資本主義はいかにして可能になったかという問いは、資本主義とは何かという問いに直結する。本書は、ポスト資本主義について考えなければならない私たちが、改めて今読むべき経済学の古典である。
『プロテスタンティズムと資本主義の精神』の要旨・要約
原始的な資本主義の萌芽は、すでに古代において全世界的に散見されていたが、近代になるまでそれはあくまで局所的な経済潮流に過ぎなかった。
そんな中、宗教改革が起こり、勤労や節約などを重んじるプロテスタンティズムの精神が人々の精神に宿るようになった。プロテスタンティズムにおいては、エネルギーの全てを目標達成のために注ぎ込むような禁欲的(ストイックな)行動が神の命において奨励されたため、労働が絶対的な自己目的であるという考え方が自然と受容されるようになった。
長年の宗教教育によってこの精神は多くの市民に広がり、勤労な労働者が数多く生まれることになった。ここに、合理的・産業経営的な資本主義が成立する地盤が整い、近代資本主義は本格的に世界を席巻することになった。
『プロテスタンティズムと資本主義の精神』への感想
人文思想を研究する者として恥ずべきことだが、21歳になるまで私は本書を読んだことがなかった。そして、読んでみてゾッとした。私たちが受けていた教育は労働者を養成することを本懐としていたのか、と。
私たちは「頑張ることは素晴らしい」という価値観を無批判に受け入れているが、よく考えるとこの命題は非合理である。合理的に言えば、できるだけ頑張らずに目標を達成することがベストなはずだからである。にもかかわらず、私たち国民の大多数は「頑張らなきゃいけない」と信じてやまない。
新型コロナウイルスに関する政策の一環で、多くの学校がオンライン教育を取り入れ始めている。オンライン教育が全て正しいと言うつもりはないが、今の教育のあり方を相対化するいい機会であるのは間違いない。頑張ることは、果たしていいことなのか。私たちはもう一度考える必要がある。
『プロテスタンティズムと資本主義の精神』と関連の深い書籍
『プロテスタンティズムと資本主義の精神』と関連の深い「西洋思想」の書籍
- シュトラウス著・塚崎智;石崎嘉彦訳『自由権と歴史』、筑摩書房、2013年
- スミス著・水田洋;杉山忠平訳『国富論 1〜3』、岩波書店、2000-2001年
- 廣松渉;良知力著『ヘーゲル左派論叢 第1巻(ドイツ・イデオロギー内部論争)』、御茶の水書房、1986年
- ヘーゲル著・熊野純彦訳『精神現象学 上・下』、筑摩書房、2017年
- マルクス著・長谷川宏訳『経済学・哲学草稿』、光文社、2010年
- マルクス;エンゲルス編・向坂逸郎訳『資本論 1〜9』、岩波書店、1969-1970年
- ミル著・斎藤悦則訳『自由論』、光文社、2012年
- ロック著・角田安正訳『市民政府論』、光文社、2011年
- レーニン著・角田安正訳『帝国主義論』、光文社、2006年