『読書について(ショーペンハウエル)』要旨・要約、感想とレビュー

『読書について(ショーペンハウエル)』要旨・要約、感想とレビュー

『読書について』の基本情報

書籍名:読書について 他二篇
著者名:ショーペンハウエル
翻訳者名:斎藤忍随
発行:岩波書店
発行年:1960年

『読書について』のキーワード

カテゴリ:哲学
キーワード:西洋思想

『読書について』のレビュー

哲学の世界の隠語として、「デカンショ」という言葉がある。近代思想の大家であるデカルト・カント・ショーペンハウエルの頭文字を取った言葉である。

哲学を学んだことがあれば「なるほど」と思うチョイスかもしれないが、そうでない人からするとショーペンハウエルの知名度だけ低いように感じるかもしれない。確かに、後世への影響度から考えれば、ショーペンハウエルは他の2人に比べてやや劣るだろう。

しかし、比較的短いエッセイ風の著作を発表したショーペンハウエルは、膨大な量の箴言(名言)を現代に伝えている。『読書について』もまた、多数の箴言に彩られた小論である。読書とは何か、私たちはいかに書を読むべきなのか。邦訳文庫版わずか21ページという分量でありながら、そこには彼の読書のススメが凝縮されている。本を読む全ての人に贈りたい一冊である。

『読書について』の要旨・要約

読書とは、他人にものを考えてもらうことである。したがって、あまりにも読書をし過ぎると、自分でものを考える力が貧弱になってしまう。

だから、読むべき本は選ばなければならない。良書を読み、悪書を読まないようにする努力が大切である。そして読むべき本を見定めたら、その本を繰り返し読んで、読んだ内容を自分の頭で深く考えなければならない。自分の中でその内容が咀嚼され尽くされれば、その内容は自分の精神的教養を育む一助になるだろう。

しかし残念なことに、世間の人々は新しいというだけの悪書にばかり手を伸ばし、数世紀以上も読まれている天才の良書を軽んじる傾向にある。天才たちは、この悲劇的状況に耐え忍ばなければならない。

『読書について』への感想

『読書について』の中でショーペンハウエルは多読を戒めたが、それは「無作法にしょうもない本を読むな」という教えであって、逆に言えば「良書はしっかり読め」という教えでもある。実際、ショーペンハウエルの読書量は非常に多かったはずである。相当な読書家でなければ、あれだけ的確に箴言を挟み込むことはできなかっただろう。自分の教え通り、ショーペンハウエルは良書を選んで読み、その内容を自分のものにしていたに違いない。

私は今こうして哲学書を読むことを促す記事を書いているが、少なくとも私はショーペンハウエルが言う所の「良書」を選んでいると思う。私が紹介しているのはいわゆる「古典」であり、「古典の読書にまさるものはない」(本書、p139)とショーペンハウエルが指摘しているからである。

となれば、問題は私が(そしてみなさんが)その良書について深く考えられているかどうかである。残念ながら、おそらく私1人では浅薄な考察しかできそうにない。コメント欄などを活用して、みなさんと良書を通じた対話的探究を図りたいと思っている。読者の皆さんにおかれては、これからもご贔屓にして下されば幸いである。

『読書について』と関連の深い書籍

『読書について』と関連の深い「西洋思想」の書籍

  • カント著, 中山元訳『純粋理性批判 1〜7』、光文社、2010-2012年
  • カント著・波多野精一;宮本和吉;篠田英雄訳『実践理性批判』、岩波書店、1979年
  • カント著・篠田英雄訳『判断力批判 上・下』、岩波書店、1964年

『判断力批判』要旨・要約、感想とレビュー

  • ショーペンハウアー著・金森 誠也訳『存在と苦悩』、白水社、1995年
  • ショーペンハウアー著・鈴木芳子訳『幸福について』、光文社、2018年
  • ショーペンハウアー著・西尾幹二訳『意志と表象としての世界 1〜3』、中央公論新社、2004年
  • デカルト著・桂寿一訳『哲学原理』、岩波書店、1964年
  • デカルト著・野田又夫訳『方法序説 情念論』、中央公論新社、1974年
  • デカルト著・山田弘明訳『省察』、筑摩書房、2006年
  • ニーチェ著・手塚富雄訳『この人を見よ』、岩波書店、1996年

『この人を見よ』の要旨・要約、感想とレビュー

3件のコメント

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