目次
『アフォーダンスの心理学 生態心理学への道』の基本情報
書籍名:アフォーダンスの心理学 生態心理学への道
著者名:エドワード・S・リード
翻訳者名:細田直哉
発行:新曜社
発行年:2000年
『アフォーダンスの心理学 生態心理学への道』のキーワード
カテゴリ:哲学、西洋思想、行為論
キーワード:アフォーダンス、生態心理学
『アフォーダンスの心理学 生態心理学への道』のレビュー
大学で心理学を勉強したことがある人は、「アフォーダンス」という言葉を聞いたことがあるだろう。
元々はアメリカの心理学者ギブスンが提唱した概念で、アメリカの工学者ノーマンによって広く知られるようになった。
平成30年度のセンター試験国語の評論でも取り扱われるなど、日本での認知度も非常に高い概念である。
しかし、この「アフォーダンス」という概念について今一つピンときていない人も多いのではないだろうか。
無理もない。実はこの「アフォーダンス」という概念は、専門家の間でも解釈に差が出る難解な概念なのである。
そこでこの記事では、ギブスンの後継者であるエドワード・S・リードの著作『アフォーダンスの心理学 生態心理学への道』のレビューを通して、「アフォーダンス」という概念についての一解釈をみなさんに紹介する。
この記事を読めば、現代の心理学の「アフォーダンス」解釈が理解できると同時に、リードが提唱する新しい心理学の姿「生態心理学」についても知ることができるので、関心があればぜひ目を通していただきたい。
『アフォーダンスの心理学 生態心理学への道』の要旨・要約
心理学は自然の一部であり、心理学の対象である人間の行為は生態学的に研究することができる。
私たちの行為は、大脳の電気信号からの指令を要因として発生するわけではない。
身体の情報伝達を担う神経ネットワークだけでは、私たちの複雑な行動は形成できないからである。
実際には、私たちは常に内的・外的な環境のアフォーダンス(=環境が私たちに与える行為の可能性)との調整関係の中にある。
私たちの行為の選択は、環境に備わっている情報を引き出し、環境との関係を調整することで行われている。
生態心理学は、私たちと環境との間のこのような関係を探求する学問なのである。
『アフォーダンスの心理学 生態心理学への道』への感想
かつて心理学には、主観主義と客観主義という2つの派閥があった。主観主義に立つ心理学者は心を魂という仮象に託して論じ、客観主義に立つ心理学者は心の働きを脳内での電気信号のやりとりに還元して論じていた。
リードが掲げる生態心理学は、主観主義にも客観主義にも属さない新たな心理学である。
主観主義も客観主義も、自我の内部と外部を明確に線引きしている。しかし生態心理学においては、私たちの行為も意識(心)も、環境との関わりあいの中で現れるものとされている。そこに自我の内部と外部の区別はない。
そして、自我の内外の区別を無効化する生態心理学は、新たな統一科学(あらゆる学問分野が超域的に協働する学問)となる可能性を秘めている。私たちと環境との関係性は、単に自然科学的であるだけでなく、社会文化的な側面を持っているからである。
心理学がこれからどう発達していくのかはわからないが、心の場を心の外側へ開放する生態心理学は、学問の差異を超えて、これからも多くの人に大きな影響を与えていくだろう……。
『アフォーダンスの心理学 生態心理学への道』と関連の深い書籍
『アフォーダンスの心理学 生態心理学への道』と関連の深い「西洋思想」の書籍
- 伊藤邦武著『ジェイムズの多元的宇宙論』、岩波書店、2009年
- シュテークミラー著:森田孝訳『現代哲学の主潮流1 ブレンターノ・フッサール・シェーガー・ハイデガー・ヤスパース』、法政大学出版局、1978年
- デューイ著:加賀祐郎訳『デューイ著作集4 哲学4 確実性の探求:行為の関係についての研究』、東京大学出版会、2018年
- ハイデガー著:細谷貞雄訳『存在と時間 上・下』、筑摩書房、1994年
- パース著:伊藤邦武訳『連続性の哲学』、岩波書店、2001年
- フッサール著:浜渦辰二訳『デカルト的省察』、岩波書店、2001年
『アフォーダンスの心理学 生態心理学への道』と関連の深い「行為論」の書籍
- ギブソン著:佐々木正人・高橋綾訳『アフォーダンスの発見ージェームズ・ギブソンとともに』、岩波書店、2006年
- ダーウィン著:浜中浜太郎訳『人及び動物の表情について』、岩波書店、1991年
- ノーマン著:伊賀総一郎・岡本明・安村通晃訳『複雑さと共に暮らすーデザインの挑戦』、新曜社、2011年
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