目次
『連続性の哲学』の基本情報
書籍名:連続性の哲学
著者名:チャールズ・サンダース・パース
翻訳者名:伊藤邦武
発行:岩波書店
発行年:2001年
『連続性の哲学』のキーワード
カテゴリ:哲学
キーワード:西洋思想、形而上学、分析哲学
『連続性の哲学』のレビュー
いつの時代にも、生まれるのが早過ぎた天才はいる。例えばアリストテレスは紀元前4世紀の人だが、彼の真価が認められたのは中世においてのことである。さらに言えば、人類が彼の遺した論理学を乗り越えたのはごく19世紀の後半のことであった。
本書を著したチャールズ・サンダース・パースもまた、人類には早過ぎた天才だったと言うべきなのかもしれない。彼は本書の中で、数学・論理学・物理学・哲学を幅広く利用しながら形而上学的な宇宙論について語った。
彼のあまりにも壮大すぎる思想は、彼が生きた時代(1839~1914)において殆ど無視されていた。戦後になってようやく本格的な研究が始められたが、パースが遺した膨大な遺稿は今も大部分が公開されていない。
謎に満ちたパースの思想の中で、少しでも理解できる部分があれば、あなたの世界の見方はガラッと変わることだろう。意味が分からなくても、根気よく読んでみてほしい。
『連続性の哲学』の要旨・要約
この実在している宇宙は、論理的に可能な宇宙の一つに過ぎない。そして、宇宙を進化の所産と捉えるなら、この論理的に可能な宇宙もまた進化の所産であると言える。
ではその進化の始まりは何か?宇宙は初め混沌(何も個別的なものがない状態)だった。そこから、自ら存在しようとする意志(感情)によって個物が発生し、自らを保存しようとする努力によってその存在が習慣(一定の規則に則る存在)となった。
さらにこれらの存在は互いの相互作用によって網の目状に拡大し、存在の可能性を広げていく。その選択の連続の帰結が、現在の宇宙である。
『連続性の哲学』への感想
本書の宇宙論は、現在広く認められている宇宙の進化論と大枠では一致している。フラットなエネルギーの場に何らかの歪みが生じ、そこで生まれたエネルギーの集積によってビッグバンが発生した…ということである。
だが、なぜフラットな場に歪みが生じたのか?パースはその原因を「感情」と呼んだが、この感情を、超人間的な存在(神)の感情とみなしたのがライプニッツであった。
実際パースの宇宙論とライプニッツの宇宙論の類似は本書解説の中でも示されている。ただし、ライプニッツは宇宙を進化論的には捉えていない。パースが、今の宇宙があるのは進化の帰結であると考えているのに対して、ライプニッツは神がその宇宙を最善なものと考えたからであると捉えている。
いずれにせよ、存在が始まるときには何かしら形而上学的な意志が働いていたと考えはある程度認められる。宇宙には形而上学的なロマンがあると私は信じたい。
『連続性の哲学』と関連の深い書籍
『連続性の哲学』と関連の深い「西洋思想」の書籍
- ジェイムズ著・桝田啓三郎訳『プラグマティズム』、岩波書店、1957年
- デューイ著・宮原誠一訳『学校と社会』、岩波書店、1957年
- ラッセル著・高村夏輝訳『哲学入門』、筑摩書房、2005年
『連続性の哲学』と関連の深い「形而上学」の書籍
- ライプニッツ著・谷川多佳子;岡部英男訳『モナドロジー 他二篇』、岩波書店、2019年
『連続性の哲学』と関連の深い「分析哲学」の書籍
- フレーゲ著・野本和幸訳『フレーゲ著作集<3>算術の基本法則』、勁草書房、2000年
- フレーゲ著・野本和幸;黒田亘訳『フレーゲ著作集<4>哲学論集』、勁草書房、1999年
- フレーゲ著・野本和幸;土屋俊訳『フレーゲ著作集<2>算術の基礎』、勁草書房、2001年
- フレーゲ著・藤村竜雄訳『フレーゲ著作集<1>概念記法』、勁草書房、199年
- ラッセル著・平野智治訳『数理哲学序説』、岩波書店、1954年
- Russell; Whitehead: Principia Mathematica Volume One ~ Three, Merchant books, 2009